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「走・攻・守」。野球のだいご味であるすべてを備えた韓国人プレーヤーが四国アイランドリーグplusからNPB・東京ヤクルトスワローズへ羽ばたいていこうとしている。
徳島インディゴソックスの外野手、ハ・ジェフン。右打席から蜂のように一撃で相手投手を捉えるバッティング。183センチ87キロの身体を蝶のように舞い踊させる走塁。さらに強く正確な肩に広い守備範囲。おまけにマウンドに立てば最速149キロ。トップを独走する本塁打5本を含め、全ての部門でベスト5以内に入る成績含め、リーグでは「別格」の存在感を発していた。
そんな彼が東京ヤクルトスワローズとの契約合意を機に、これまで謎に包まれていた球歴の全てを2回に分けて初公開。後編では途中まで順調も、苦難もあったアメリカでの7年間の経験と、四国アイランドリーグplusにやってきた経緯、そして東京ヤクルトスワローズでのこれからについて話して頂きます。

「順調のち苦心」のアメリカでの7年間

――2009年にショートシーズンを過ごした翌年、アメリカでの2年目はシングルAからのシーズンスタートとなりました。

ハ・ジェフン外野手(以下、ジェフン) シングルA、A+、ダブルA(AA)と2010年からは順調に昇格できました。そこからはけがが多くて苦しみました。背中の筋肉が伸びて2カ月半休まなくてはいけない時期もありましたし。ただ、2013年と2014年はトリプルA(AAA)でもプレーできました。

――AAAになるとMLBも目に入る場所になりますね。

ジェフン AAAとMLBが対戦したら、AAAも勝つ可能性がある。両者の差はそのくらい拮抗しています。AAAにはベテランの選手もいっぱいいますし。自分も2013年の前半は非常に調子がよくAAAに昇格できました。
ただ、僕の場合はここで腰と左手首を痛めて最後まではプレーできませんでした。その治療が2014年までかかって、再びAAからスタート。最後にAAAに昇格したという流れです。

――スプリングキャンプではMLBシカゴ・カブスでプレーする機会もあったのですか?

ジェフン マイナー扱いで参加したり、試合帯同はしたことがあります。2013年にかんしてはMLBキャンプに全部参加して、終わったと同時にAAに下がった経緯もあります。

――となると、シカゴ・カブスに所属していた日本人選手とも接点はあったのでは?

ジェフン 和田 毅投手(現:福岡ソフトバンクホークス)はAAAでの接点はありますが、さほど長くは一緒にやっていません。藤川 球児投手(現:阪神タイガース)とはケガのリハビリを一緒にやっていました。藤川さんの投球を僕が打つといったこともありましたね。

徳島インディゴソックスで「NPBに行きたい」日々へ

――ただ、2014年のショートシーズンになると、投手をすることになります。なぜ「投手転向」だったのですか?

ジェフン 2014年は先ほど話したことがあって中盤にAAに合流。終盤にAAAに上がったんです。ですので、自分としては「2015年こそはMLB昇格」と思っていたのですが、チームとしてはそのように思っていなかったみたいで……。誰が投手転向を提案したのか解りませんが、その人を私は探し出したい気分です。

――四国アイランドリーグplusで1試合登板した時に「最速149キロ」では、提案したくなる気持ちは解らないわけでもないですが。

ジェフン (笑)。まあ、当時は肩の強い野手を投手に転向させるトレンドもあったんですが、AAAの外野手を転向させる話は聞いたことはなかった。
もちろん、そこで他の球団を選択する道もありました。でも、ここで僕は思ったんです。「まず一度はやってみよう。そこでダメなら打者に戻ればいい」と。そこでいい結果が出たので、2015年は投手をしていました。
そして2015年を終えて、思ったのは「やはり打者で勝負したい」だったんです。